1968年、ジョン・カルフーン博士は、ネズミの社会行動を研究するために「UNIVERSE 25」と名付けられた実験を開始しました。

この実験は、ネズミにとって理想的な環境、つまり飢餓もないし、病気もない、生きるための努力が一切必要のない世界を作り出し、彼らの行動を観察することを目的としていました。

もちろんラットを使った実験ですから、人間社会の構造と類似している点も多く、人間社会の未来像を示唆するような内容になっています。

もしも本物のユートピアがあったなら、結論から申し上げますと、絶滅します。

では人類は絶滅するのか?

記事の最後には実験内容から見えた絶滅に向かう社会から抜け出す方法を提示します。

ちょっと怖い話ですが、この実験は現実に行われたものですので、みなさんそれぞれの解釈でみてみてください。

未来は変えられます。

まずはおおまかな時系列を追ってみましょう。

時期出来事
1968年実験開始:ネズミの理想的な環境「UNIVERSE 25」を設定
1968年~1969年個体数の急増:ネズミのカップルが導入され、繁殖が開始
1969年~1970年過密状態の進行:個体数が増加し、競争やストレスが顕在化
1970年~1971年異常行動の出現:攻撃性、育児放棄、社会的孤立などの行動異常が観察される
1971年~1972年社会崩壊:繁殖の停止と個体群の急減、最終的には消滅
Profile

この記事を担当:音楽家 / 朝比奈幸太郎

1986年生まれ
音楽大学で民族音楽を研究。
卒業後ピアニストとして活動。
インプロビゼーション哲学の研究のため北欧スウェーデンへ。
ドイツケルンにて民族音楽研究家のAchim Tangと共同作品を制作しリリース。
ドイツでStephan Desire、日本で金田式DC録音の五島 昭彦氏から音響学を学ぶ。
録音エンジニアとして独立し、芸術工房Pinocoaを結成。
オーストリア、アルゼンチンなど国内外の様々なアーティストをプロデュース。
株式会社ジオセンスの小林一英氏よりC言語、村上アーカイブスの村上浩治氏より、写真と映像を学ぶ。
2023年からヒーリング音響を研究するCuranz Soundsを立ち上げる。
世界中に愛と調和の周波数を届けるため、癒しの音をCuranz Soundsにて発信中。

ネズミの街

930平方メートルの箱で計算上5000匹のねずみを飼育できる環境でした。

標準的なねずみであれば、24センチ角のゲージで飼育できるというわけです。

実験当初は5万匹が生まれ、平均して5000匹が暮らすことを想定していました。

結果は平均150匹最大では200匹までしか育たなかったそうです。

ここから時系列でねずみたちがどのような未来を構築していったのか詳しくみていきましょう。

1968年:実験開始

ジョン・カルフーン博士は、ネズミの社会行動を研究するために「UNIVERSE 25」と名付けられた実験を開始。

環境はネズミにとって理想的なもので、無限の食糧と水、安全な居住空間が提供されました。

これは人類が長い歴史の中で追い求めてきた理想郷であり、AIの力によってこれから到達しようとする世界観なのであります。

1968年~1969年:個体数の急増

ネズミのカップルが導入され、すぐに繁殖が始まりました。

豊富な資源により、個体数は急速に増加しました。

初期段階では、ネズミたちは平和に共存していました。

コロニーというグループ概念

繁殖が進むと、ねずみたちは12匹をベースにコロニーのようなグループを作るようになります。

十分な広さがあるにもかかわらず、特定のエリアだけでねずみは増えていったそうです。

これは部族や国家などの概念と類似するようなものなのでしょうか。

1969年~1970年:過密状態の進行

個体数が増加するにつれ、環境は次第に過密状態になりました。

ネズミたちは限られた空間で生活することを余儀なくされ、競争が激化しました。

食糧や居住スペースの争奪が頻繁に発生し、社会的ストレスが高まりました。

また、いくつかのコロニーでは、オスがまだ子供のメスに襲いかかるということが発生し、まだ体の小さなメスが悲鳴をあげて逃げ回る様子が観察されています。

カルフーンは助けようと思ったが、実験に影響が出るのを懸念し観察を続けたということです。

もしかすると、、、神様が地球で暮らす人類を見る構図と同じなのかもしれません。

1970年~1971年:異常行動の出現

過密状態が進行するにつれ、ネズミの行動に異常が見られるようになりました。

オスのネズミは攻撃的になり、他の個体と頻繁に争いました。

その中で先述したようなロリコンのねずみがいたり、オスがオスを襲うという構図があったり、狂ったようにメスばかりを求める個体が存在したりしていました。

また、一夫多妻制であるねずみ社会としては、1匹のメスを複数のオスが襲うということは生物学的にありえないと思われていましたが、数匹のオスが1匹のメスを追い回し、いじめや虐待まで発生したということです。

また、子ねずみの数が少ないと思い、観察していると、オスネズミが子ねずみを噛み殺したり、母ネズミが我が子を食べていたりする例も観察されました。

当時このカルフーンの研究を掲載していた雑誌には、「まさにマッドマックスの世界」と表現していたそうです。

飢餓もなく、十分なスペースがあり、生存に何不自由ない状態にも関わらず、餌を食べようとする子ネズミを攻撃したり、いじめて減らしたりし、大人のねずみは12匹というマジックナンバーは様々なアプローチにより、維持されていくことになりました。

また、一部のネズミはコロニーや社会に対して無関心となり、社会的孤立が増えていきました。

メスのネズミは子育てを放棄し、出生率が低下し、交尾こそ頻繁に行われていましたがしだいに妊娠率は低下していき、無事に出産しても異常がみられたり、いじめの対象となったりして成長することなく途絶えるといった現象が多く観察されました。

1971年~1972年:社会崩壊

最終段階では、ネズミの社会構造は完全に崩壊しました。

繁殖活動が停止し、個体数は急激に減少しました。

攻撃的な行動や引きこもりがさらに目立ち、最終的にはネズミの個体群は完全に消滅しました。

考察と行動シンク

この実験結果からカルフーンが導き出した発見は「生き物は、与えられた人工環境下で生活すると、本来持っている遺伝的な要素や行動パターンよりも、より好転的な社会規範に縛られ、従うようになり、ストレス状態に陥っても打開策が見いだせなくなる」というものでした。

さて、人間社会はどうでしょうか?

例えば食料問題を取り上げてみましょう。

食料が足りていれば人口はひたすら増加するという考えはこの実験によって否定されることになります。

広さ、養分なども十分な環境が与えられていても、生き物の個体数は様々なアプローチによって自然に淘汰されていくという論理が一つ考えられます。

つまり、世界大戦などの戦争や疫病など、これらは先に発生したから人口が削減されているのか、あるいは人口をつまり生き物としての個体数を減らすなんらかの法則がそこにあったから発生した現象なのか?

このユートピア実験の結果をあてはめると後者であるというわけであります。

マルサス主義とソロー主義

マルサスの人口論
マルサスの人口論

トーマス・ロバート・マルサス(Thomas Robert Malthus, 1766-1834)は、イギリスの経済学者であり、1798年に「人口の原理に関するエッセイ」(An Essay on the Principle of Population)を発表しました。彼の人口論は、以下のような基本的な主張に基づいています。

人口の増加

マルサスによれば、人口は幾何級数的(指数的)に増加します。これは、人口が倍増する速度が一定であり、短期間で急速に増加することを意味します。

食糧生産の増加

一方、食糧生産は算術級数的に増加します。これは、食糧生産の増加が直線的であり、人口増加に比べて遅いことを示しています。

結果と影響

マルサスは、人口が食糧生産を上回ると、食糧不足が発生し、飢饉や病気、戦争などによって人口が調整されると主張しました。これを「マルサスの罠」と呼びます。

予防的抑制

マルサスは、人口増加を抑制するための方法として、「予防的抑制」(moral restraint)を提唱しました。これは、結婚の遅延や性的自制によって出生率を低下させることを意味します。

現代への影響

マルサスの理論は、現在の人口問題や環境問題の議論においても重要な影響を与えています。特に、資源の有限性と持続可能な発展の必要性についての議論において、マルサスの視点は重要です。

マルサス主義の中には、人口の増加を止めるためには晩婚化や非婚化が必要であるという論理が成立します。

これはビルゲイツも類似の思想を持っており、ビルゲイツはまさにマルサス主義がベースになっていると考えられます。

マルサス主義そのものはある程度データも揃っており、若年層での妊娠や出産は、学力の向上をはばまれ、貧困のループから抜け出せないというロジックです。

そのため、ビルゲイツは例えば貧困層のいる地域に無料でコンドームを配布したり、このアクションが行きすぎると、人口削減のためにおくすりを使用しているかもしれないという陰謀論がささやかれるわけでありますが、こうした陰謀論は、すでに陰謀でもなく普通に支配者層が行なっていると考える方が自然であると筆者はみています。

マルサス主義の盲点となるのが、テクノロジーの積算である。

産業革命以降は食料の大量生産が可能になり、これによってまた様々な問題も露呈してくることになります。

例えば農薬や薬剤などの化学的なリスクが発生します。

人類は食糧危機を産業革命によって乗り越えることができたのでしょうか?

ノーベル経済学賞も受賞したロバートソローが唱えるソロー主義では、テクノロジーやイノベーションが容易に世界の人口増加をはじめとした壁を突破するというものであります。

テクノロジーの発展とともに、小麦の収穫量は増え続けています。

全世界の小麦の収穫量
全世界の小麦の収穫量(1950年~現在)
収穫量(百万トン)
1950120
1955147
1960189
1965231
1970263
1975318
1980440
1985501
1990589
1995548
2000585
2005626
2010651
2015735
2020760

このデータはFAOの統計データベースから取得され、1950年から2020年までの全世界の小麦の収穫量を示しています​ (FAOHome)​​ (FAO Data Apps)​​ (FAOHome)​。

2050年の人口

現在約80億人の人口は、2050年には、97億人に到達すると予想する分析があります。

タンパク質が不足してしまうという予想もありますが、産業革命同様にどこかでイノベーションが起こり、対応可能になるという考え方はソロー主義をベースとしているわけですね。

絶滅に向かう社会から抜け出す方法

このユニバースの実験は、条件を変えて何度も行われたそうですが、結果は決まって絶滅するというものになったそうです。

産業革命をはじめとして過去人類に起こってきたイノベーションは絶滅に向けた一つのフェーズに過ぎないのでしょうか?

あるいは、コロニーを抜け出す勇気を持ってこのマッドマックス化していく世界から一歩足を踏み出せば新しいユートピアが待っているのでしょうか?

衣食住が無制限に供給されすべての欲求がみたされ、生存に関連する一切のリスクがない状態のユートピアのはずが、絶滅のディストピアを生み出していたというかなり面白い実験であるわけです。

野生のラットは絶滅していませんから。

十分な広さがあるにも関わらず、(地球)一部の地域だけで過密化していく(国家や都市)。

その後集団行動が苦手なねずみは交尾ができず、巣も作れず、こんなねずみが全体の3分の2まで増える。

一方で他を圧倒する非常に凶暴なラットが現れ、そのコロニーはマッドマックスになっていく。

メスは子供を産まなくなり、産んだとしても育児放棄を始める。

なぜか生まれた子供は凶暴なオスに食べられたり攻撃されたりする。

乳児死亡率はしだいに100%に近づき、到達した時点で絶滅する。

今地球で起こっていることはどのフェーズなのか?

前半部分は非常に似ている。

するとやがて乳児死亡率は100%になっていくのでしょうか?

筆者はこの事実を現実と受け止め、コロニーから一歩でる勇気が欲しい・・・と常々思っております。