誰しも経験する可能性がある「乗り物酔い」。
車やバス、船、飛行機に乗っていると、ふとした瞬間に襲ってくる吐き気やめまい、倦怠感…。
その原因は、耳の奥にある“バランスセンサー”とでも呼ばれる「前庭器官(ぜんていきかん)」の混乱によるものであることがわかっています。
特に、内耳に存在する「耳石器(じせきき)」と呼ばれる部分は、体の揺れや重力を感じ取る役割を持っていますが、このセンサーと、目から入る景色の情報がズレてしまうことで、脳が混乱し、体調不良として現れるのが乗り物酔いなのです。
「音」で前庭器官をサポートする方法
名古屋大学の研究チームは、この“体のセンサー”に直接アプローチできる音を探し出しました。
研究によると、特定の音波、つまり「100Hzの純音(ピュアトーン)」を耳から与えることで、前庭器官が刺激され、バランス感覚が安定するというのです。
この音は「サウンドスパイス」と名付けられ、まさに音による体のチューニングのような存在と言えるでしょう。
実験で証明された効果
研究チームは、マウスで実験しています。
耳石器に100Hzの音を約5分間聞かせた後、揺らしてバランス感覚をテストしたところ、酔いやすい状況でもバランス力が維持されていました。
さらに人間の被験者にも同様の実験を行い、わずか「1分間」100Hzの音を聞かせたところ、乗り物酔いによる「ふらつき」や「吐き気」などが明らかに軽減される結果が得られました。
なぜ100Hzが効果的なのか?
この100Hzという周波数は、耳石器のセンサー部分に心地よい振動を与え、脳と体のバランス機能をサポートする働きがあると考えられています。
音の大きさも騒音レベルには程遠い、非常に安全な音圧(65.9dBA程度)であるため、日常生活の中でも安心して取り入れることができます。
今後の可能性と応用
この研究成果は、私たちの生活に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。
例えば、
- 車内スピーカーに「サウンドスパイス」を組み込む
- スマートフォンアプリで100Hzの音を再生する
- イヤホンで移動前に1分だけ聴く
といった新しい使い方が実現すれば、乗り物酔いが怖くない時代がやってくるかもしれません。
また、以前記事でご紹介したピンポイントで特定の人物やゾーンにだけ周波数を照射することができれば、乗り物酔いの方だけに一定時間ごとに聞いてもらうことができるかもしれません。
まとめ
これまで薬や景色を見たりガムを噛んだりと、様々な方法で対策されてきた乗り物酔い。
しかし最新の科学は「音」というシンプルかつ副作用のない方法に可能性を見出しました。
わずか1分の「100Hzの音」が、あなたの移動時間をもっと快適に、心地よいものに変えてくれるかもしれません。
未来の旅は、耳からはじまる。
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