人類が失った叡智の一つに、音があります。
音(振動)はこの宇宙の根本原理であり、この物質世界の最小構成単位でもあります。
古代から人類は音や祈り(声)によって天候をも操作してきました。
例えば現代でも神秘の楽器の一つである雅楽、龍笛などを吹いていますと、鳥たちが周りによってきて、取り囲んだり、風が吹いて来たり、急に雲が切れだすなんて現象を実際に感じることがあります。
実際に周辺の気温も変化したりするわけです。
量子物理学的に考察すると、むしろ、音や声によって天候、環境は変化しない・・
と考える方が無理があるほどです。
この記事を担当:音楽家 / 朝比奈幸太郎
1986年生まれ
音楽大学で民族音楽を研究。
卒業後ピアニストとして活動。
インプロビゼーション哲学の研究のため北欧スウェーデンへ。
ドイツケルンにて民族音楽研究家のAchim Tangと共同作品を制作しリリース。
ドイツでStephan Desire、日本で金田式DC録音の五島 昭彦氏から音響学を学ぶ。
録音エンジニアとして独立し、芸術工房Pinocoaを結成。
オーストリア、アルゼンチンなど国内外の様々なアーティストをプロデュース。
株式会社ジオセンスの小林一英氏よりC言語、村上アーカイブスの村上浩治氏より、写真と映像を学ぶ。
2023年からヒーリング音響を研究するCuranz Soundsを立ち上げる。
世界中に愛と調和の周波数を届けるため、癒しの音をCuranz Soundsにて発信中。
失われてはいますが、形式として現代までその手法が語り継がれているもの、また、現代でも忠実に再現された楽器によって、効果があるもの、様々であると思いますが、本日は人類が雨を降らせるために神様にお願いしてきた歴史と文化を紹介します。
Contents
約1万2000年前頃
農業が生活の基盤である文化では、豊かな収穫は生存に直結しています。
人類が農耕生活を開始したのは、約12,000年前の新石器時代にさかのぼります。
この時期を「農業革命」とも呼びます。
農業の発展は、人類史において重要な転換点とされ、狩猟採集生活から定住生活への移行を促しました。
最終氷期の終わりとともに気候が安定し、温暖化が進んだことも関わっていると言われています。
農業自体は複数の地域で同時多発的に開始されたと言われています。
- 中東の肥沃な三日月地帯(メソポタミア、レバント)では、小麦や大麦の栽培が開始。
- 東アジアでは、約10,000年前に米の栽培が開始。
- アメリカ大陸では、トウモロコシ、カボチャ、豆類の栽培が開始。
- アフリカでは、ソルガムやヒエが栽培開始。
農耕時代に大切になってくるのが、「雨乞い」の儀式です。
今でこそ、雨は足元を悪くする・・・といったニュアンスで嫌われますが、1万年以上前の人類にとってはまさに恵みの雨。
多くの古代文化では、雨は神々からの贈り物と見なされ、雨を司る神々を崇拝する宗教が発展しました。
雨乞いの儀式や祈りは、これらの神々への敬意を示し、恵みを求める手段でした
雨が降ることは、神聖なシグナルとして受け取られ、コミュニティの精神的な結束を高める機会となり、人々は自然界との深いつながりを感じ、宗教的な感謝の念を深めていきました。
同時に雷が神の怒りを表していることも想像できます。
音が天候を変化させる科学的根拠
そんなものはありません。
人類が今持っている科学はこの宇宙の真理から比較すると未解明、未科学の範囲があまりにも広く、とりわけ、音や音楽に関しては、科学的なアプローチをとる方法や手段はないといっても過言ではないほどです。
音の心理学・・・という学問もありますが、実は非常に俯瞰度が低いものしか定義できず、結局はシュタイナーなどの神智学をうまく変換して体系的に語る学問になっています。
しかし、それではただの伝説となりますので、ある程度論理的に考察していきましょう。
音は、空気や他の媒体を通じて伝わる振動(波動)です。
音の波動が物体に当たると、その物体を振動させ、エネルギーを伝達します。
しかし、この振動が直接的に大気の状態や気象条件を変化させるほどのエネルギーを持っているわけでではないのもまた事実です。
量子物理学の観点
量子物理学の観点からもう少し深く考察してみましょう。
人からはフォトンが出ています(これをバイオフォトンといいます)し、粒子の放出は可能であり、天候も原子、粒子が表す現象でしょうから、突然雨を観測することも可能なはずですよね。
また、突然雨のパラレルワールドに集団で移行することも可能なはずです。
音と祈りがそれらの出入り口になるという仮説は十分考察していく価値がありそうです。
量子エンタングルメント(もつれ)と意識
量子エンタングルメントは、粒子間の瞬時の相互作用を示す量子力学の現象です。
一部の理論家は、人の意識も量子レベルでの現象に関連していると推測しています。
量子エンタングルメントは、量子物理学の中でも特に不思議な現象の一つと言われています。
この現象は、二つ以上の粒子が互いに「絡み合う」ようにして、それらの量子状態が密接に関連付けられることを指しています。
エンタングルメント(量子もつれ)された粒子は、たとえ空間的に離れていても、一方の粒子の状態を測定することで、即座にもう一方の粒子の状態について情報を得ることができます。
この「即座に」という表現は、光速よりも速く情報が伝わるかのように見えるため、アインシュタインはこれを「遠隔作用」と呼び、不気味だと感じました。
想像してみてください。
あなたが一組の特別なコインを持っているとします。これらのコインは「量子コイン」と呼ばれ、非常にユニークな性質を持っています。
量子コインは、投げるまでは「表」か「裏」の状態が不確定で、投げた瞬間にその状態が決まります。
しかし、量子エンタングルメントの不思議な点は、二つの量子コインが絡み合っていると、一方が表であることが確定すると、もう一方も即座に裏であることが確定するということです。
ここで、もし一方のコインを東京に、もう一方をニューヨークに持って行っても、この関係は変わりません。
東京で一方のコインを投げて「表」が出た瞬間、ニューヨークのコインは「裏」であることが確定します。
そして、この「確定」は、どんなに離れていても瞬時に起こります。
これが量子エンタングルメントの不思議な現象です。
重要なポイント
- 非局所性:エンタングルメントされた粒子間の相互作用は、距離に関係なく瞬時に起こります。これを「非局所性」と呼び、量子力学の基本原理の一つです。
- 観測の影響:量子状態は観測するまで不確定ですが、一方の粒子を観測すると、もう一方の粒子の状態も同時に確定します。この現象は、量子情報科学や量子コンピューティングにおいて重要な役割を果たします。
- アインシュタインの誤解:アインシュタインはこの現象を「神はサイコロを振らない」と表現し、受け入れがたいと感じましたが、多くの実験によって量子エンタングルメントは実際に存在することが証明されています。
この量子もつれを考えても、音、祈りそのものが、天候を即座に変える・・・当然雨が実際に落ちてくるまでに時差はあるにせよ、即座に人々の意識と天候にもつれが生じることは想像できます。
それではここから上記のような現象仮説をイメージしながら、世界の雨乞い儀式の文化を紹介していきましょう。
日本の雨乞い文化
日本は、古来から自然との調和を大切にする文化を持っています。その一環として、雨乞いの儀式は数多くの地域で受け継がれてきました。これらの儀式は、不確定な天候に対する人々の願いや、自然への畏敬の念を表現しています。
宇土の雨乞い大太鼓とは、熊本県宇土市で行われる雨乞いの儀式。
特にその中心となる「宇土の雨乞い大太鼓」で知られています。
この太鼓は、単なる楽器を超え、雨を呼び寄せる神聖な道具として尊ばれています。
- 儀式の構成:この儀式では、太鼓だけでなく、祈りや神事、そして地域に根ざした民俗舞踊も組み合わされます。これらの要素が一体となって、雨を呼び寄せる力を高めるとされています。
- 地域コミュニティの役割:雨乞いの儀式は、地域コミュニティにとっても重要なイベントです。共同で行うことにより、地域の絆を強化し、自然との共生の思想を再確認します。
Youtubeに少しだけ音がありましたので、シェアさせていただきました。
日本の神道文化では、随所に自然との調和、八百万の神々に対する意識は存在していました。
他にも有名な雨乞いの儀式、祭りをシェアしておきます。
奥能登のアマメハギ
石川県の奥能登地方で行われる「アマメハギ」は、雨乞いと豊穣を願う伝統的な行事です。
夏の乾燥が続く時期に、地元の若者たちが鬼の面をつけ、手には竹を持って村を練り歩きます。
彼らは家々を訪れ、悪霊を払い、雨を呼び込む役割を担います。
この儀式は、地域社会の安全と豊かな収穫を祈願する目的があります。
龍神祭
和歌山県の那智勝浦町で行われる「龍神祭」は、雨と水の神である龍神を祀る祭りです。
この地域は熊野古道があることで知られており、古くから修験道の修行地としても有名です。
龍神祭では、豊かな雨と水の恵みを感謝し、また次の年も良い雨が降ることを祈願します。
祭りでは、神事のほかにも地元の人々による伝統的な舞や音楽が披露されます。
あめのひの祭
静岡県の富士宮市で行われる「あめのひの祭」は、雨乞いと五穀豊穣を願う祭りです。
この祭りは、古くから富士山信仰と密接に関連しており、富士山の神様に豊穣と良い天候を祈願します。
祭りでは、地元の人々が神輿を担ぎ、太鼓や笛の音に合わせて町を練り歩きます。
御田植祭(おんたうえまつり)
京都府の宮津市では、「御田植祭」という独特の雨乞いの儀式が行われます。
この祭りは、稲作の神様に良い収穫と適切な雨量を祈願するためのもので、田植えの儀式を行いながら豊穣を願います。
参加者は伝統的な装束を身にまとい、神聖な田んぼで田植えを行うことで、自然との調和と感謝の気持ちを表現します。
ネイティブアメリカンの雨乞い儀式
ネイティブアメリカンの文化では、自然界との深いつながりが信仰と生活の根底にあります。
雨乞いの儀式は、この深いつながりを象徴する行事の一つであり、豊かな収穫と生命の維持を願う重要な祈りです。
また、ネイティブアメリカンの雨乞い儀式では、ドラムが中心的な役割を果たします。
ネイティブアメリカンの雨乞い儀式で言及される「ドラム」は、伝統的な打楽器であり、特定の名前などは存在していません。
このドラムは、通常、動物の皮(鹿やビーバーなど)を木製のフレームに張り、手で叩いて演奏します。
ドラムの音は、祈りや儀式の際に自然界や祖先の霊とコミュニケーションを取るための手段とされています。
ドラムの音は、祖先の声や大地の鼓動と見なされ、自然界とのコミュニケーションの手段として用いられます。
ドラムのリズミカルな響きは、参加者の心を一つにし、集団の祈りの力を高めます。
また、ネイティブアメリカンの雨乞い儀式は、部族によってさまざまな形を取るところもポイントです。
それは日本でも同様でしょう。
ある部族では、特定の踊りや歌が雨を呼び寄せるために演じられ、別の部族では、特定の祈りや瞑想が行われます。
これらの儀式は、それぞれの部族の伝統、信仰、そしてその地域の自然環境に根ざしたものですし、それぞれのコミュニティー内で霊能力を持つ人物が指導している可能性もあります。
アフリカの雨乞いの伝統
アフリカ大陸では、豊かな文化的多様性を背景に、雨乞いの儀式が様々な形で行われています。
これらの儀式は、地域ごとの気候、環境、そして伝統的な信仰や神話に深く根ざしています。
ジャンベとバラフォン
アフリカの雨乞いの儀式では、ジャンベやバラフォンなどの楽器が中心的な役割を果たします。
ジャンベは西アフリカが起源の太鼓で、その力強いリズムは参加者を一つに結びつけ、共同体の結束力を高めます。
バラフォンは木製の鍵盤に共鳴管を取り付けた打楽器で、メロディアスな音色は神聖な雰囲気を醸し出し、雨を呼ぶための祈りを支えます。
- 西アフリカ:特にガーナやマリなどの国々では、ドラムやダンスを伴う雨乞いの儀式が盛んです。これらの儀式では、祖先の霊や自然の精霊に対する祈りが捧げられます。
- 東アフリカ:ケニアやタンザニアの一部の部族では、特定の儀式的な歌や踊りが雨を呼び寄せるために行われます。また、神聖な場所での祈りや供物の捧げも一般的です。
- 南アフリカ:ズールー族などの部族では、伝統的なハーブや薬草を使用した儀式が雨乞いに利用されます。これらの儀式は、治癒者やシャーマンによって導かれます。
バリ島の雨乞い:ガムランの音
バリ島では、雨乞いの儀式がそれぞれ独自の文化的背景と信仰体系の中で行われています。
これらの地域では、雨は農業に不可欠な要素であり、豊かな収穫と生命の維持に深く関わっています。
バリ島の雨乞い儀式
バリ島の宗教的儀式や文化には、ヒンドゥー教の影響が強く、自然現象や精霊との調和を重んじる多くの儀式が存在します。
これらは通常、トリ・ヒタ・カラナ(三界の調和)という哲学に基づいており、人間、自然、そして神との調和を目指します。
バリ島には、豊穣や雨を願う様々な儀式が実際に存在し、これらは地域の伝統や信仰に深く根ざしたものです。
例えば、ティルタ・エンプル寺院で行われる聖水の儀式など、自然との調和を促進し、祈りを捧げる行為は多く見られます。
バリ島の伝統的な音楽文化といえば、ガムランです。
ガムランはインドネシア、特にジャワ島とバリ島の伝統的な打楽器アンサンブルであり、多種多様な楽器から構成されます。
ガムランの音律には主に二つのシステムがありますが、これらは西洋音楽の音律システムとは異なっています。
筆者は実際に大学時代はガムラン研究会立ち上げメンバーの一人でした。
そのエリアでも珍しい音楽博物館を所有する音大でしたので、ガムランのフルセットが立ち上げ時から使えたという恵まれた環境でした。
スレンドロ (Slendro)
スレンドロは五音音階を基盤とする音律システムで、その音階はほぼ等間隔に配置されています。
これは西洋的に表現すると、一般的なのはメジャー・ペンタトニック・スケールとマイナー・ペンタトニック・スケールとなります。
しかし、この「ほぼ等間隔」というのが重要なポイントとなります。
西洋音楽の平均律とは異なり、各音の間隔は厳密には等しくないことに注意してください。
スレンドロの音階は柔らかく、落ち着いた印象を与えます。
ペロッグ音律 (Pelog)
ペロッグは七音音階を基盤とする音律システムで、スレンドロよりも複雑な音階を持っています。
- 不均等な音階間隔:ペロッグ音階の最大の特徴は、その不均等な音階間隔にあります。これにより、ペロッグ音律は西洋音楽にはない特有の雰囲気と感情表現を可能にします。
- 音階のバリエーション:ペロッグ音律にはいくつかの異なるバリエーションが存在し、地域や楽曲、演奏の文脈によって使い分けられます。一般的には7音からなりますが、実際の演奏ではこれらの音のうち5つまたは6つを選んで使用することが多いです。
- 調律の相対性:ペロッグ音律の調律は絶対的なものではなく、楽器ごとに、またはアンサンブルごとに異なる場合があります。これは、ガムラン楽器が一つのセットとして調律され、他のセットとは異なる独自の音色を持つためです。
ガムランの調律とミニマル音楽
ガムランの楽器は主に金属製であり、調律は楽器を物理的に加工することによって行われます。
楽器の調律は非常に繊細な技術を要し、経験豊富な職人によって手作業で行われます。
楽器ごとに異なる固有の音を持っており、その音はガムランアンサンブル全体の調和を作り出すために重要となっています。
また、ミニマル音楽の原型とも言えるスタイルなのも特徴です。
各自持つパートを繰り返すことで、精神統一を高めます。
古代ギリシャとその他の文化
古代ギリシャでは、自然現象や神々との関わりは日常生活の中で重要な役割を果たしていました。
雨乞いの儀式も例外ではなく、ゼウスや他の自然を司る神々への祈りとして行われていました。
- ゼウスへの祈り:ゼウスは天空、雷、天気の神として崇拝されていました。古代ギリシャ人は、豊穣と良い収穫をもたらす雨を祈願してゼウスに祈りを捧げました。これらの祈りは、しばしば祭典や儀式の形で行われ、コミュニティ全体の参加を促しました。
- 儀式と祭典:古代ギリシャの祭典では、神々への捧げ物や動物の犠牲、そして神話にちなんだ劇の上演などが行われました。これらの祭典は、神々とのコミュニケーション手段として、またコミュニティの結束を強化する機会として重要でした。
古代ギリシャより以前になると、シュタイナーなどの存在による、霊的な霊視が必要になって来ます。
これらの文化を知ることで、音と天候を考えるきっかけとなるでしょう。