誰かのSNSの投稿を眺めていると、ふと胸の奥がきゅっと冷たくなる。
みんな楽しそうにつながっているのに、自分だけが取り残されている。
そんな感覚に襲われたことはありませんか。
友だちと過ごしたあとの帰り道、ひとりになったとたんに押し寄せるさみしさ。
これから先もずっとひとりなのではないか、という怖さ。
孤独は、私たちの日常にもっとも深く忍び込む痛みのひとつです。
でも、その孤独の感覚には、大きな思い違いが隠れているかもしれません。
二千五百年以上前、釈迦が説いた「縁起」という智慧が、そのことをやさしく教えてくれます。
あなたは「ひとり」で存在していない
縁起とは、すべてのものごとは因縁によって生じる、という教えです。
どんな存在も、それだけで独立してあるのではなく、無数の条件が重なりあって、いまここに立ち現れている。
この教えを、釈迦は『相応部経典』のなかで、とても印象的な譬喩を用いて説きました。
二つの葦の束が、互いにもたれかかって立っている。
一方を引き抜けば、もう一方も倒れてしまう。
同じように、私たちの意識も、身体や感覚と支えあって成り立っている。
どちらも、単独では立ちえないのです。
It is as if two sheaves of reeds were to stand leaning against one another. In the same way, from name-and-form as a requisite condition comes consciousness, from consciousness as a requisite condition comes name-and-form.
出典: 『相応部経典』第12巻67経「葦束経(Naḷakalāpī Sutta)」Access to Insight, Thanissaro訳
これは遠い哲学の話ではありません。
いま、この瞬間のあなたも、無数のつながりのなかにあります。
あなたが吸っている空気は、遠くの森が生み出した酸素です。
いま着ている服は、どこかの誰かが糸を紡ぎ、布を織ってくれたものです。
あなたが考えている言葉そのものも、長い時間をかけてたくさんの人たちが育ててきたもの。
孤独を感じているその瞬間でさえ、あなたはすでに世界と深く結ばれています。
「ひとり」だと思っているその感覚こそが、じつは一つの錯覚なのかもしれません。
孤独のなかの「つながり」に気づく
とはいえ、「ぼっちでいるのがつらい」という気持ちは本物です。
だから釈迦は、縁起の教えとともに、善き友と過ごすことの大切さも説きました。
『相応部経典』のなかで、弟子のアーナンダが「善き友は修行の半分です」と言うと、釈迦はこう応えます。
「アーナンダよ、そう言ってはいけない。
善き友は修行の全部だ」と。
Don't say that, Ananda. Don't say that. Admirable friendship, admirable companionship, admirable camaraderie is actually the whole of the holy life.
出典: 『相応部経典』第45巻2経「半経(Upaḍḍha Sutta)」Access to Insight, Thanissaro訳
釈迦は、人と人とのつながりを、それほどまでに大切にしていたのです。
ただし、ここでいう「善き友」は、ただにぎやかなだけの関係ではありません。
あなたがあなたらしくいられて、互いに高めあえるつながり。
それが一本でもあれば、孤独の怖さはずいぶんとやわらぐものです。
もし「こういう関係でなければ」と執着して苦しくなってしまうことがあれば、以前お伝えした「執着を手放せないあなたへ」も、よろしければのぞいてみてください。
今日の小さな実践
今日、一日のどこかで、こんなふうに立ち止まってみてください。
あなたがいま手にしているもの、口にしているもの、感じていることをひとつ取り上げて、「これはどこから来たんだろう」と想像してみるのです。
コーヒーカップの向こうに、豆を育てた農家の人がいる。
電車の座席の向こうに、車両を設計した人、運転する人がいる。
画面のなかの文字の向こうに、何百年もかけて言葉を育ててきた無数の人たちがいる。
そうやって見渡してみると、あなたのまわりは、思っていたよりずっとたくさんの人たちで満ちています。
孤独がこわいと感じたときこそ、その「見えないつながり」にそっと目を向けてみてください。
つながりは消えたのではなく、ただ見えにくくなっていただけかもしれません。
そして、もしも今夜、また孤独の波が押し寄せてきたら、こう自分に語りかけてみてください。
「私はいま、ひとりで呼吸をしているけれど、この呼吸は世界と私をつなぐ糸でもある」と。
その一呼吸が、あなたのなかにある縁起の真実です。