世界一わかりやすい「参加型宇宙論」:ジョン・ホイーラーが描いた宇宙の本質

ジョン・ホイーラーとは?

ジョン・アーチボルド・ホイーラー (John Archibald Wheeler, 1911-2008) は、アメリカの理論物理学者であり、量子力学や宇宙論の分野で多くの革新的なアイデアを提唱しました。

彼の研究は、ブラックホール、量子情報理論、そして「参加型宇宙論」といった現代物理学の根幹に関わるものばかりです。

ホイーラーの経歴

  • 1911年:アメリカ合衆国フロリダ州で生まれる。
  • 1933年:ジョンズ・ホプキンス大学で博士号を取得。
  • 1939年:ニールス・ボーアと共に核分裂理論を研究。
  • 1940年代:マンハッタン計画に関与。
  • 1950年代以降:ブラックホール研究を主導し、「ブラックホール」という名称を広める。
  • 1970年代:「参加型宇宙論」を提唱。
  • 2008年:死去。

彼の影響は量子力学だけでなく、宇宙論全般に及び、後の研究者に多大な影響を与えました。


参加型宇宙論とは?

参加型宇宙論 (Participatory Universe) とは、アメリカの物理学者ジョン・ホイーラー (John Archibald Wheeler) が提唱した、量子力学と宇宙論の関係を説明する斬新な理論です。

この理論の根幹には、**「宇宙は観測者の存在によって形作られる」**という考え方があります。

通常、宇宙は独立した存在として考えられますが、ホイーラーは「観測することによって宇宙は決まる」という視点を提示しました。


思考実験「20の質問」とホイーラーの洞察

ホイーラーは、彼の理論を説明するために「20の質問ゲーム」を例に挙げました。

20の質問ゲームとは?

  • 1人の参加者が、ある単語を思い浮かべます(例:「りんご」ですが、質問を受ける側はこれを決めていません)。
  • 他の参加者が「それは生物ですか?」「食べられますか?」などの質問をしながら、単語を当てようとします。
  • しかし、ここで重要なのは、答えを決めるのは質問する側ではなく、質問の流れに応じて単語が最終的に決まることです。

20の質問と宇宙の関係

このゲームを宇宙に置き換えると、

  1. 最初から宇宙が決まっているわけではなく、観測が進むにつれて宇宙の性質が決定されていく。
  2. つまり、私たちの質問(観測)が、宇宙のあり方を決定しているのではないか?
  3. これは、量子力学の「観測問題」に直結している。

この考え方は、宇宙が観測されることによって初めて確定するという、ホイーラーの参加型宇宙論の核となる概念です。


量子力学と参加型宇宙論

ホイーラーの理論は、量子力学の根本原理と密接な関係があります。

  • 観測するまで決まらない
    • 量子力学では、粒子の状態は観測されるまで決まりません。
    • 例えば、「シュレーディンガーの猫」の思考実験では、猫が「生きている状態」と「死んでいる状態」の重ね合わせになっています。
    • 観測した瞬間に、どちらかの状態に決まります。
  • 遅延選択実験とホイーラーの洞察
    • ホイーラーは「遅延選択実験」という考えを提唱しました。
    • これは、未来の観測が過去の状態を決定する可能性があることを示唆しています。

参加型宇宙論が示す宇宙の本質

ホイーラーの参加型宇宙論は、宇宙の性質について以下のような重要な示唆を与えます。

  1. 宇宙は観測者なしには存在しえない?
    • 宇宙は「独立した存在」ではなく、観測することで初めて確定する可能性がある。
  2. 物理法則すら観測によって変わる?
    • もし観測者が物理現象を決定しているなら、物理法則も観測によって変化しうる。
  3. 私たちが宇宙の創造者?
    • 私たちは宇宙の単なる観測者ではなく、宇宙を形作る「参加者」かもしれない。

私は創造主なのか?

ここまで読むと、おそらく、「だったら私たち一人一人がこの世界の創造主であり、神様であるということ?」と思う方もいるかもしれませんね。

その理解は「参加型宇宙論」の視点に沿った解釈の一つです。

ホイーラーの考えでは、宇宙の性質は観測によって確定するため、観測者(私たち)が関与しなければ、宇宙の状態は決まらない可能性があるとされています。

つまり、宇宙は私たちの観測によって創造されるという意味で、観測者は宇宙の「参加者」または「創造主」とも言えるでしょう。

ただし、これは哲学的な解釈の一つであり、「個々の人間が完全に宇宙を作り出している」という意味ではなく、観測と現実の関係が深く結びついているという概念に基づいています。

あなたの意識が宇宙全体を直接作り出しているのか、それとも観測の積み重ねによって宇宙の性質が決定されているのかについては、物理学や哲学の中でも意見が分かれています。

真偽を考察

1. 「真」である可能性

  • 量子力学の観測問題は、実験結果によってある程度支持されています。例えば、「遅延選択実験」や「量子エルゴード仮説」は、観測によって過去の状態が確定する可能性を示唆しています。
  • ホイーラーの参加型宇宙論は、**「観測が宇宙を形成する」**という考えを支持するものであり、少なくとも現代の量子力学の枠組み内では整合性があります。

2. 「儀」である可能性

  • しかし、ホイーラーの理論は哲学的な側面が強く、直接的な実験で「宇宙が観測によって決まる」と証明することは難しい。
  • 物理学の標準的なアプローチでは、量子状態が観測で決まるというのは事実だが、それが宇宙全体に適用できるのかは未解決の問題。
  • 宇宙の誕生や進化が「人間の観測」によって決まったとするなら、人間が存在する前の宇宙をどう説明するのか?という根本的な疑問が生じる。

3. 結論

  • 量子力学の現象としては「真」だが、宇宙全体の法則としてはまだ「儀」の域を出ていない。
  • 科学的に実験で証明できる範囲では「観測が量子状態を決める」のは事実。
  • ただし、「宇宙全体が人間の観測によって決まる」とするのは哲学的な仮説に過ぎない。

まとめ:ホイーラーの「参加型宇宙論」とは何か?

  • 宇宙は観測によって確定する
  • 観測者が宇宙の本質を決める
  • 量子力学と深く結びついた概念
  • 物理学と哲学の境界を超えた壮大な理論

「私たちは宇宙を単に見ているだけではなく、宇宙の在り方そのものを決めているのではないか?」という問いは、まさにホイーラーの理論の核心です。

あなたは、この考え方をどう思いますか?


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