「未来を切り拓く」「望む未来を自分の手でつかむ」。
そんな言葉に励まされる一方で、ふと立ち止まることはありませんか。
未来を「つくる」ことに疲れてしまう瞬間が、誰にでも訪れます。
まだ来ない未来を待ちながら、いまの自分には足りないものばかりを数えあげてしまう。
もっと努力しなければ、もっと準備しなければ。
そう考えるほどに、未来は遠ざかっていく気がして、心が重くなる。
でも、もし未来が「つくる」ものではなく、すでにあなたの手の届くところに「ある」ものだとしたら。
劇場にたとえてみましょう。
ひとつの劇団が持っているレパートリーには、喜劇もあれば悲劇もあり、冒険物語もあれば、しっとりとした恋の話もあります。
どの演目も、もう脚本は出来上がっている。
必要なのは「どの演目をいま上演するか」を決めることだけです。
私たちの人生も、これとよく似ています。
あなたが歩めるかもしれない未来は、ひとつではありません。
いくつものパラレルな「演目」が、すでにあなたのレパートリーのなかに存在している。
未来を一から組み立てようとしなくても、「どの演目を選ぶか」に意識を向けるだけで、幕は上がり始めるのです。
ここで大切な「対の真実」があります。
スイッチは、必ず働きます。
あなたが「こちらの未来を生きる」と知った瞬間、現実のほうが動き始めます。
これは世界のしくみです。
しかし、ここに落とし穴があります。
「必ずこうならなければ」と握りしめる力、つまり「力み」が入ると、スイッチはぴたりと止まってしまうのです。
未来はレパートリーのなかにある。
けれど、「絶対にこの演目でなければ」とひとつにしがみつくほど、場面は切り替わらなくなります。
まるで舞台の袖で、脚本を握りしめすぎて、役者が動けなくなってしまうように。
だからこそ、「選ぶ」という感覚が大切です。
選ぶのは、軽やかな行為です。
いくつかの演目のなかから、「今日はこれにしよう」と手に取る。
気が変わったら、また別の演目に持ち替えてもいい。
未来は、あなたが思うよりずっと、やわらかいものなのです。
前に書いた「朝イチ、望む演目をレパートリーから選ぶ」では、一日の始まりに今日の演目をそっと選ぶ習慣をお伝えしました。今日お伝えしたいのは、そのさらに手前の視点です。レパートリーそのものは、もうすでにあなたのなかにあるのだということ。
「まだない」と思っていた未来が、じつは「もうある」。そのことを知るだけで、スイッチは動き出します。「「もうある」と知るだけで幕が上がる」でもお伝えした、世界のやさしいしくみです。
では、今日からできる小さな実践をひとつ。
目を閉じて、いまのあなたが「もし選べるとしたら」と思う未来を、三つ思い浮かべてみてください。
大げさでなくてかまいません。
「穏やかな一日」「思いがけない出会いがある一日」「心があたたかくなる一日」。
そんなふうに、軽い気持ちで三つの演目をならべてみる。
そして、そのなかから今日のあなたが「これがいいな」と感じるものを、ひとつだけ選んでみてください。
決定的に決めなくても大丈夫です。
「今日はこっちの気分」くらいの軽さで。
未来は、遠くにある目的地ではありません。
あなたのレパートリーのなかに、もう並んでいる演目です。
一から「つくる」のを、今日は少し休んでみませんか。
そして、すでにある選択肢のなかから、あなたの手でそっとひとつ、選んでみてください。
現実のほうが、その演目を舞台に運んできてくれます。