「よかったね」と言えない自分が、つらい

友人が結婚すると聞いたとき。

同僚が昇進したと知ったとき。

SNSで誰かの輝く毎日が流れてくるたびに、胸の奥で何かがちくりと痛みます。

「よかったね」と言いながら、心のどこかではまったく喜べていない。

そしてそんな自分に気づいた瞬間、もうひとつの痛みが押し寄せます。

「心が狭いんだろうか」と自分を責める声です。

この二重の苦しさに、心がつぶされそうになったことはありませんか。

二千五百年以上前、釈迦はこの心の動きを見抜いていました。

嫉妬は誰の心にも起こる自然なもの。

問題は嫉妬そのものより、そのあとに自分を責めてしまうところにあるのです。

嫉妬の正体、「比較」がつくり出す渇き

なぜ友人の幸せを喜べないのでしょうか。

根っこには「比較」があります。

誰かが手に入れたものを自分は持っていない。

その差に目を向けたとき、心にぽっかりと穴があいた感覚が生まれます。

釈迦はこの「まだ足りない」という尽きない渇きを「渇愛」と呼びました。

嫉妬の痛みは「自分にはない」という欠落感から生まれ、その欠落に気づいたとき「感じる自分」を責めてしまう。

苦しみが苦しみを呼ぶ、これが嫉妬の本当のつらさです。

嫉妬全般については「嫉妬の炎が消えないとき、慈悲の水を注ぐ釈迦の智慧」もご覧ください。

「妬む者は、心のおだやかさを得られない」

釈迦は『法句経』で、嫉妬についてこう説きました。

自分の得たものを軽んじてはならない。他人の得たものを妬んではならない。他人を妬む者は、心のおだやかさを得ることができない。

出典: 『法句経』第二十五章 第365偈(Max Muller訳, 1881年)

この短い一節には、二つの大切なことが込められています。

ひとつは「自分の得たものを軽んじない」こと。

嫉妬の奥には、自分がすでに持っているものを見落としている状態があります。

友人の結婚をうらやむとき、自由な時間やこれから出会う誰かの可能性を忘れていませんか。

もうひとつは「妬む者は心のおだやかさを得られない」という真理。

嫉妬は相手を傷つける前に、妬んでいる自分の心を焼いているのです。

嫉妬の解毒剤、「喜びを共にする心」

では、この苦しみから自由になる道はあるのでしょうか。

釈迦は嫉妬を手放す実践として「喜びを共にする心」を教えました。

慈しみ、あわれみ、喜びを共にする心、おだやかな心の四つを育てる教えのひとつです。

「喜びを共にする心」とは、他者の幸せを自分のことのように喜ぶあり方。

嫉妬が「あなたの幸せが私の不足を照らし出す」感覚なら、「喜びを共にする心」は「あなたの幸せが私の心もあたたかくする」という向きです。

大事なことは、いきなり百点を目指さないこと。

「いま嫉妬しているな」と認め、そのあとに「でもあの人が幸せそうでよかった」とほんの少し心の角度を変えてみる。

それで十分です。

比較のつらさについては「比較に疲れたとき、釈迦の「足るを知る」」もお読みください。

今日からできる、やさしい実践

今日からできる三つの小さなことをお伝えします。

ひとつめ。

友人の幸せを知ったら、まず「よかったね」と声に出してみてください。

心がついてこなくてもかまいません。

口にすることで心の習慣は変わっていきます。

ふたつめ。

嫉妬が湧いたときは、自分を責める前に「いま比べているな」と気づいてあげてください。

気づくだけで、嫉妬のとげは抜けていきます。

みっつめ。

夜、眠る前に「今日、心をあたためてくれた誰かの笑顔」を思い浮かべてみてください。

その人の幸せが、自分の心にもそっと光をともすのを感じてみるのです。

嫉妬のゆくえは、あなたの手のなかに

友人の幸せを喜べない自分を、どうか責めないでください。

嫉妬は冷たい心のあかしではなく、ただ「自分には足りない」と思い込む、心の古い習慣がつくる影です。

その影を追い払おうと必死になるより、「ここに影があるな」と気づいて、そっと光を当ててみる。

それだけで、嫉妬のゆくえは変わっていきます。

今日一日、友人の幸せを「一緒に嬉しい」と少しでも感じられたなら、それはもう、大きな一歩です。

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よくある質問

Q. 友人の幸せを喜べない自分は、人間として冷たいのでしょうか

A. いいえ、冷たいのではなく、むしろ人間らしい自然な感情です。

嫉妬は誰の心にも起こる反応で、二千五百年以上前から釈迦もその苦しみを知っていました。

「いま嫉妬を感じているな」とまず認めることから始めてみてください。

Q. 「喜びを共にする心」は、どうすれば育てられますか

A. 「よかったね」と声に出すことから。

心が追いつかなくても、口にすることで習慣は変わります。

まったく関係のない誰かの幸せを喜ぶ練習も負担が少なく効果的です。

Q. 自分を責めるのをやめられません。どうすればいいですか

A. 「自分を責めてはいけない」とさらに自分を責めてしまう方も多いものです。

責める自分に気づいたら「いま責めているな」とだけ認めて深追いしないこと。

友達に語りかけるようなやさしさで「そう感じるのも無理ないよね」と声をかけてみてください。