肩の力みは思考のこわばり
こころが緊張すると、からだも緊張します。
誰にでもある自然な反応です。
けれども、ただの癖で終わっていないとしたら。
あなたの肩にのっているのは、昨日の心配事や明日への不安、あるいは「こうでなければ」という思い込みの重さかもしれません。
思考がひとつのパターンに固まると、からだのどこかが呼応してこわばります。
とくに肩は感情と直結した場所。
頭のなかで繰り返す同じ考えが、そのまま肩の力みとして定着してしまうのです。
ここで「リラックスしなきゃ」と肩を下ろそうとしてもうまくいきません。
力みを力で押さえつけようとしているからです。
現実を動かすスイッチは必ず働きます。
けれども握りしめる力みこそが、そのスイッチを止めてしまう。
これは思考と現実のあいだにある「対の真実」です。
「リラックスしなきゃ」という思いもまた、新しい力みにほかなりません。
あくびが教える、からだのリセットスイッチ
では、どうすれば力みはほどけるのでしょう。
答えは意外なところにあります。
あくびです。
あくびには、からだ全体の緊張をゆるめる働きがあると考えられています。
大きく口を開け、息を吸い込んで、ふっと吐き出す。
この動きで横隔膜が大きく上下し、自律神経のバランスが切り替わると示唆されています。
緊張しているときは交感神経が優位です。
あくびは副交感神経を呼び覚ます、からだに備わった自然なリセット機能のようなものなのです。
そしてあくびには、大事な性質があります。
力めないことです。
わざとやろうとすればするほど出てこない。
ふとした瞬間にすっと出る。
この「力まない」ことこそが、あくびのいちばんの力です。
頭で考えるよりも、からだで知っているほうがスイッチは深く入ります。「知るだけでは足りない、感じるで深めるスイッチの入れ方」でも触れていますが、演目を切り替えるには頭の「知る」をからだの「知る」へと深めることが欠かせません。あくびはその入口です。
舞台を切り替える、今日の小さな実践
今日からできる簡単な稽古です。
まず、肩に力が入っているなと感じたら、それを認めてください。
「ああ、力んでるな」と知るだけで、もう少しだけスイッチは動きます。
そのうえで、わざと大きなあくびをしてみましょう。
最初は出ないかもしれません。
それでかまいません。
まねごとでも、大きく口を開けて息を吸い、ふっと吐き出すだけで、からだは反応し始めます。
吐ききったあとの一瞬に、肩の力がストンと落ちるのを感じてみてください。
そしてその数秒間、望む演目をそっと思い浮かべてみましょう。
「もう、ある」と知るだけで十分です。
強く願う必要はありません。
力を抜いたからだが「ある」を知っている。
それでいいのです。
一日に何度でもやってみてください。
あくびはいつでも、どこでもできる、あなただけの小さな幕間です。
からだの力みをほどくことは、思考のこわばりをほどくこと。そしてこわばりがほどければ、舞台は自然と切り替わっていきます。「力みを見つけて手放す、日常でできる5つの稽古」でも、からだに注意を向けることの大切さをお伝えしています。
よくある質問
Q. あくびをわざとするのは不自然に感じます。逆効果ではないでしょうか
A. 最初は違和感があるかもしれません。
でもあくびは、まねからでも自律神経の切り替えを促すと考えられています。
何度か試すうちに自然なあくびが出るようになり、違和感は薄れていきます。
Q. あくびで力みがとれても、すぐにまた肩がこわばってしまいます
A. 一度で完璧にほどこうとしないことです。
それもまた力みになります。
肩が上がっているのに気づいたら、そのたびにあくびを一つ。
気づく回数が増えること自体が、力みのパターンを手放していく稽古です。
Q. あくび以外にも、からだでスイッチを切り替える方法はありますか
A. 深く息を吐くだけでも効果があります。
吐く息は副交感神経を優位にします。
また両腕を上に伸ばしてからストンと落とすのも、肩の力みをほどくのに役立ちます。
どれも力まずにできるものを選んでみてください。